青海ヶ浦駅改良
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1.プロジェクトの背景
昭和62(1987)年の青海線複線化以後、青海ヶ浦駅は大観光地青海半島の交通結節点としての機能を著しく増したが、同時に、市内の道路渋滞の激化を招いた。鉄道の乗客が青海ヶ浦から先の目的地に向かうには当然ながら当駅でバス・タクシー・レンタカー等に乗り換えねばならず、それらの車が駅周辺に集中するようになったのである。
また、青海市自体の都市化に伴い、南西急行桜崎駅~青海ヶ浦駅間の地平区間が街を分断しているとの批判も巻き起こり、同区間の連続立体交差化が求められるようになった。ただ、これは「踏切の一時停止がウザい」というクルマ利用者の声や、街並みを近代化したいという商工会サイドの思惑もあったであろう。同区間は日中に毎時4往復の列車が運転されるだけで、いわゆる「開かずの踏切」状態になっているわけでもなかったからだ。
これらの動きに対し、X県はマイカー利用を抑制させたい立場から当初は道路の利便性を向上させるプロジェクトに消極的であった。しかし、青海線を青海ヶ浦以南に延伸するという動きにも具体的な進展が無く、将来にわたって青海ヶ浦駅が鉄道⇔道路交通の乗り換え拠点であり続けるのは明白であったため、青海市内の道路機能の向上は長期的に必要なことであるとの意見が関係機関内の大勢を占めるようになった。
2.設計の概要
このプロジェクトでは、
が盛り込まれ、近年の南西急行では久々の大規模工事となった。
特に上記の2点目については、本プロジェクトの目玉として、高架化した青海ヶ浦駅の一階部分にバスターミナルとタクシープールが設けられている。これは、駅全体を二階に持ち上げ、駅とその周辺の施設をペデストリアンデッキで直結して、歩行者を二階に、車を一階に分離するという歩車分離の考え方を採用したことによる。駅前広場は時計回りのロータリー構造となり、バスターミナルとタクシープールにはロータリーから直接乗り入れ可能となっている。これにより、駅周辺のバス停やタクシー乗り場を整理して市中心部の道路渋滞の解消を図っている。
青海ヶ浦駅本体は、車両基地との入出区線がスロープ状になり、その長さを稼ぐ必要性から線路配線が変更され、2面4線から2面3線に縮小されている。この機能縮退は運転サイドから猛反発があり、基地内に引上線を新設し、ホームを引上線の代用としていたのを解消することでようやく合意を得た。
また、新駅では3番ホームに面したスペースで大規模なエキナカ店舗を展開する構想が出されていたが、「南西急行の商売のために県が駅改良の資金を出すことはできない」と工事費の負担金協議で槍玉に上がったという。これに対しては南西急行側が「このエキナカを造らなければあなた方が造りたがっているバスターミナルに屋根がかからなくなりますよ?」と押し切ったと言われているが、真偽のほどは定かではない。



3.工事ステップについて
本プロジェクトは下図のように6ステップで施工されている。青海ヶ浦駅は青海運転所を併設しており、基地の機能を減殺させずに駅の姿を変えていく点が非常に困難を伴うところであった。全ての工事が終了したのは平成24年7月であり、工期は7年にも及んだ。
高架化前の青海ヶ浦駅
STEP1 仮駅化
桜崎駅切換口起点方にシーサスを挿入し同駅を連動駅化。青海ヶ浦駅の切換は、超長大間合いを確保して2晩で施工。その間、特急は陽光高原、普通は桜崎折返で運転。桜崎~青海ヶ浦間はバス代行で対応した。
STEP2 下り仮線切換
桜崎~青海ヶ浦間下り線の海側に仮下り線を仮設。旧下り線を上り線化、旧青海ヶ浦駅を撤去。
STEP3 上り仮線切換
桜崎~青海ヶ浦間旧下り線を仮上り線に切換。青海ヶ浦高架新駅を建設。
STEP4 上り線高架切換
桜崎駅切換口起点方で上り線を新上り線に切換。切換後、仮下り線と新上り線はそれぞれ単線で運用。車両基地にアクセスする運用の列車は仮青海ヶ浦駅で、折り返す運用の列車は新青海ヶ浦駅に発着。
STEP5 下り線高架切換
桜崎~青海ヶ浦間仮下り線を新下り線に切換、青海運転所との入出区線を切換。こちらの切換は丸一日、車両基地の機能を殺して行う大規模なものとなった。
STEP6 保守用車基地移設
STEP5からSTEP6までの間は車両基地15・16番線を臨時に保守用車基地に転用した。留置能力の減は、陽光高原駅への留置変更等で対応。青海ヶ浦駅の着発線が減って車両基地内の移動が増えることから引上線を新設。仮駅を撤去し、都市計画道路を敷設。桜崎駅のシーサスクロッシングと連動装置は撤去して棒線駅化。
4.桜崎駅高架化
本プロジェクトでは、桜崎駅の高架化もメニューに入っていた。これは同駅近傍にあった踏切を除去することが目的であったが、あまりにも手狭な同駅を改良してほしいとの要望は青海市民から常日頃から出されていたものだった。
青海ヶ浦駅の改良の際、切換工事で列車の運転が不可能になる場面では当駅を一時的に連動駅として普通列車の折り返しを行ったことがあるが、駅前広場が無くて代行輸送のバスを乗り入れさせるスペースを近辺に見つけられなかったり、狭いホームに鉄ヲタが集中して警備に多くの人数を割かれたり…と、当駅のショボさは最期に至るまで南西急行のスタッフに苦労を強いるものであった。

