南西急行電鉄研究会

緩行線グリーン車

 南西急行電鉄は、平成22年度初から東京線(緩行線)用の全編成にグリーン車を連結している。JR東日本が展開している中距離電車のグリーン車と同様のサービスであるが、地下鉄線を含んだ純然たる通勤路線への特別車両の連結はこれまで前例が無く、賛否両論含めて大いに注目された。なお、本プロジェクトで導入されたグリーン料金決済システムについては別項を参照されたい

1.グリーン車導入の経緯

 本プロジェクトは、新東武鉄道の発案により推進されている。

 同社の通勤客の乗車距離は他社線に比べて長く、通勤客に対する着席サービスの提供は同社にとって大きな課題であった。計画当初は、いわゆるライナー的な列車を投入することが考えられたが、その発着駅が(新東武の)浅草や北千住とあっては、乗換無しでゆったりというわけには行かず、地下鉄谷町線との直通が必須とされた。しかし、谷町線内におけるターミナル駅の確保が困難であること、地下鉄直通用の新造車両という大きな投資を伴うこと、増発に向けた乗務員等の要員の確保がこれまた課題となっていた。

 そこで新東武鉄道では発想を転換し、地下鉄谷町線へ直通する全列車に特別車両(まだ「グリーン車」と呼称することは決定していなかった)を連結するという方針を選択した。ただし、これには相互乗り入れをしている東京メトロと南西急行も同じ施策を同調して展開する必要があり、例によってその協議に時間が費やされた。

 一方、南西急行としては、実のところ東京線の緩行線各駅をターゲットとした「沿線価値の向上」のための営業施策に手詰まり感を感じており、少子・高齢化による乗客減が見込まれるなかでの増収策として本プロジェクトにメリットを見出した。しかし、初期投資が巨額になることから、新規の車両新造を極力避け、手持ちの6000系を改造して緩行線用車両(1600系)に連結し、従来車の置き換え用の新型車(1800系)は特別車両連結を前提として投入して対応することとした。

 問題は東京メトロであり、純然たる都市内交通を担う地下鉄に特別車両を連結するのは馴染まない、として当初は難色を示した。しかし、現実を見れば、谷町線に多くの乗客を流し込んでいるのは新東武と南西急行であり、直通列車を利用する乗客へのサービスを改善しなければ両社と共に谷町線がやせ細ってしまうことは確実であったため、最終的には本プロジェクトに同意した。ただし、南西急行と同様に初期投資の大きさが問題視され、車両新造を避け、連結する特別車両のタネ車は南西急行から提供を受けている。

 発議者である新東武鉄道は、直通運転用の全編成に連結する44両の特別車両を新造するという大きな投資を決定することになり、同社の並々ならぬ意欲を察することができる。

 ところで、JR東日本の先例と同様に、ラッシュ時間帯の混雑が解消されていない状況で特別車両を連結することに対する否定的意見は絶えることが無い。これに対し、新東武・東京メトロ・南西急行3社は「これまでの増発と、少子化・高齢化社会の進展によりラッシュ時の混雑は緩和してきており、輸送力不足となる懸念は無い」「むしろラッシュ時こそ着席サービスの導入が望まれている」「直通運転系統における乗客の平均乗車距離は他の路線に比して長く、快適な座席が求められている」として、特別車両の連結が乗客サービスの向上に不可欠と主張した。

 また、JRが既に使用している「グリーン車」という名称に関しては、特別車両の一般的名称となっていることから特に問題は生じないとして、3社でも本プロジェクトで提供する特別車両のサービスを「グリーン車」と呼ぶこととした。

2.6000系のグリーン車転用

 緩行線~谷町線~新東武線の直通運転系統(愛称:NEWS-Line)に運用される車両は、南西急行35本、東京メトロ16本、新東武44本の計95本760両あり(注:これは平成21年度時点での数量)、本プロジェクトではその全編成の4号車にグリーン車を連結している。グリーン車は、3社間の協定により2扉・リクライニングシート装備(ピッチ900mm)で統一されている。その中で注目されるのは、南西急行6000系の中間車を改造し、南西急行1600系東京メトロ8000系の編成にグリーン車として組み込んだ点である。

 改造のタネ車に6000系が選定された理由としては、

  • 地下鉄直通を前提として1600系と同一の車体構造を採用していた
  • 地下鉄谷町線のホームドア設置が予定されており、ドア位置が4扉車に近いことが求められた
  • ラッシュ時対応および臨時列車の運用に限定されており、車両の痛みが激しくなかった
  • 1600系とシステム的に互換性があった(例えばジャンパ線のコネクタピンの配列が同一である等)

 等が挙げられる。

 下の図版は、6000系M車→1600系Ts車の改造内容を示したものである。車体外板の塗装変更、トイレ・洗面所の撤去、電装の解除を施工していることが判る。なお、各座席の上部荷棚にはICカードのタッチセンサーとLED表示灯が、ドア付近の立席スペースには立席用のタッチセンサーが設けられ、さらに、各シートには着席/空席を検知する「着席センサー」が備えられている。改造後の座席定員は、これまでより8名増加し、64名となっている。

 なお、この改造によって余剰となった6000系車両は、主要部分が八浦鉄道6000系の建造に再用されたほかは廃車・解体された。

緩行線グリーン車/6000before.gif
6000系M車 改造前

1600系/1600-g.gif
1600系Ts車への改造後

緩行線グリーン車/6000kaizo.gif
6000系転用の概要図

3.グリーン車の新製投入

 南西急行1800系新東武2000系は、平成20年度までに投入した編成に別途新造したグリーン車を組み込み、平成21年度以降新造した編成にはあらかじめグリーン車を組み込まれて投入されている。また、新東武鉄道は、9000系の編成に2000系と同仕様のグリーン車を新造し組み込んでいる。

 下の図版は南西急行1800系のグリーン車で、新東武2000系も同仕様であり、南西急行16両・新東武鉄道44両の計60両が建造され、大量発注によるコストダウンを実現している。乗り心地向上のため台車にヨーダンパが装備されている(普通車には装備されていない)

1800系/1800-g_side.gif
1800系グリーン車

4.サービス開始の流れ

 JR東日本で東北・高崎線にグリーン車を導入した際は、全編成に連結を完了するまでグリーン車を普通車扱いとしていた。これは、同社のグリーン車サービスが「乗車前にグリーン券を購入する」(商品を見る前に買う)ことを前提としており、全編成とは言わずとも全体の8割ぐらいの編成に連結しなければ「グリーン券は買ったけれど連結した列車が全然来ない!」という不評を招いてしまうからである。

 これに対し、南西急行(および東京メトロ・新東武鉄道)では、別項の決済システムにより「G車が連結されていることを確認し乗車した後に料金を決済できる」(商品を見てから買い物ができる)ことから、連結を完了した編成から順次有料でのサービスを開始する方式を採用した。

 ただし、投入初日の時点である程度の割合でグリーン車を連結した編成が出揃っていなければ、グリーン車を狙って乗りたい利用者を失望させてしまう。そのため、サービスの初日となった平成21年12月1日には1400系8編成の運用を1800系後期車8編成(当初からグリーン車を連結していた)に一挙に置き換え、さらにその1週間後には1800系前期車8編成へのグリーン車連結を完了させている。

 一方、1600系の編成への6000系改造グリーン車の連結は、組み込まれる側となる1600系側の改造の途上で不具合(車両情報管理システムのソフトウェアのバグ)が発見され、平成22年1月までに完了する予定が3月中旬までズレ込んだ。

 緩行線車両へのグリーン車連結作業を進めている間は、南西急行の各車両基地は一時的にダブついた編成が疎開留置され、留置線からあぶれた急行線の編成を駅に夜間滞泊させるなど、多くの臨時措置が採られた。このプロジェクトは傍から見れば緩行線の車両交換に過ぎないが、現場レベルではかなり手間のかかるものであった。



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