南西急行電鉄研究会

営業戦略


1.駅・営業所の体制

 南西急行の競争力の源泉は、強力な直轄営業部隊の存在にある。南西急行は、会社統合の際に非鉄道事業部門を前身3社から分離したため、鉄道業で利益を出して生き残る以外に道が無くなった。そこで、自らの営業力を強化し、現金収入を確保することを基本戦略としてきた。

 南西急行の営業部隊の現業機関は「営業区」と呼称し、主要駅とその周辺の複数の駅をまとめて担当する、他社でいう管理駅に相当する。新宿駅渋谷駅旗塚駅三泉駅紅林駅乾駅神津駅海浜公園駅新成原駅美咲空港駅美咲駅名取駅八浦駅鶴神温泉駅青海ヶ浦駅柊台駅矢積駅戸張駅水澄駅の19箇所がある。自駅しか担当しないところもあるが、それでも現業機関名はあくまで営業区であり、南西急行には「駅長」というポストが存在しない。

 各営業所の概況については南西急行の現業機関#2.営業区を参照されたい。

営業戦略/eigyo-ku.gif
南西急行の営業区の配置と担当駅 が営業区のある駅

2.団体営業・団体列車

 南西急行では沿線にKDRや美咲空港・青海・水澄等の集客力の大きな施設や観光地を有しているため、昭和55年の全線直通化以降、団体を対象とした営業に力を入れてきた。沿線の企業や学校をまわって営業活動を展開するのが営業区の渉外営業Gである。

 渉外営業の社員に与えられている権限は強大であり、例えば、出先の学校で遠足のための団体列車の運転を要請されれば、その場で本社の運転計画部門に電話をかけて即座にダイヤを押さえることもできる。このような業務システムを構築しているのは、県内の観光地・施設と各都市、東京都心を結ぶ南西急行の路線を活用して「特に大口団体を呼び込んで県内経済を活性化したい」という、大株主たるX県の意向が強く働いている。

 このX県の方針により、南西急行は大口団体を受け入れるための団体列車に多くの経営資源を投入することになった。平成3年度に6000系を一挙に56両も登場させたこともその一環である(団体・臨時列車用の車両に対してこのような規模で投資を行うこと自体が鉄道会社としては極めて異例のことであった)。一方、ダイヤの面でも、いわゆる「盛り込みスジ」をダイヤに組み込んで団体・臨時列車を容易に設定可能であり。顧客の要望に機動的に対応できるようにしている。

 南西急行が団体列車を重視する理由としては、もう一つ「定期一般列車への団体混乗を極力避ける」という方針が挙げられる。南西急行は最大8両編成に制限され、一般車・急行車は3扉クロスシート仕様で収容力に弾力性が乏しい(要するに詰め込みが効かない)ので、混雑している定期列車に団体客を混乗させれば、一般客にも団体客にも不快な思いをさせることになる。そこで、南西急行は各旅行会社と「100人を超える団体を乗車させる旅程を組む場合は、1週間前までに南西急行側に乗車日時・区間・人数を連絡する」旨の協定を結んでおり、これにより団体客が集中する日時・区間を集約して、定期列車混乗により著しい混雑が予想される場合に団体列車を設定することとしている。

 なお、青海・水澄を目的地とする団体需要に対しては、定期特急列車への混乗を主体として対応している。全車指定席の特急列車であれば、車両の割り当てさえ適切に行えば一般乗客との混乗に特に問題は発生しないからである。このため、特急列車は特定の号車の特急券を1週間前まで発売せず、団体客の飛び入りに対応できるようにしている。

 南西急行の団体客の目的地は、実態としては、青海・水澄<神津・美咲空港<海浜公園(KDR最寄駅)となっている。首都圏各地の学校が修学旅行に出かける際に、新幹線や航空機へのアクセスとして南西急行を利用する例が多く、前述したX県の「県内に客を呼び込みたい」という方針は、団体客の割合としては必ずしも実現できているわけではない。

 なお、南西急行の団体列車の具体的なダイヤ例は別項にて述べているので参照されたい。

3.南西急行と他企業との連携

 南西急行の営業戦略の一つに、他の鉄道会社や交通機関との連携による誘客がある。全国レベルの知名度を持つ施設や観光地を沿線に持つ有利さを生かし、広い地域から乗客を集める不断の努力が続けられている。

(1)東京メトロ

 谷町線と直通運転をしていることもあって、南西急行と東京メトロ(旧首都高速度交通営団)は長年にわたって密接な連携を保っている。営業的には、東京メトロ線内発着の企画切符の発売という形が多かったが、「パスネット」の導入によって意義が薄れ、現在は「エアポートアクセスきっぷ」のみが通年で発売されている。

 これまで、両社の連携で問題になっていたのは、東京メトロ線内で南西急行の特急券が購入できないことであった。例えば、東京メトロとの(実質的な)結節点である旗塚駅のホームには特急券自動券売機があるが、東京メトロの駅で事前購入できないのは指定券入手難で知られる特急を利用するには心細い。このように、東京メトロ"発"のサービスが限定されていることはしばしば問題視されていた。

 しかし、平成19年3月18日より、PASMOのサービス開始に合わせて民鉄各社の商品を共通で取り扱う汎用営業システムPARAUSSが使用開始され、東京メトロの各駅で南西急行他の民鉄各社の特急券を購入できるようになり、旅客サービスが改善された。このことは民鉄各社のJR・他交通機関に対する競争力増強に大きく資するものとして期待されている。

 また、平成21年度より東京メトロおよび新東武鉄道と共に神津~館林・新栃木間でグリーン車を連結(決済システムについてはこちらを、車両に関してはこちらを参照)しており、3社の連携は新たな局面を迎えたと言える。

(2)南武鉄道

 南武鉄道とは新神津神津美咲の3駅で連絡運輸をしているだけで、営業面での連携はあまり強固ではない。これは、ライバル関係にあるからということではなく、積極的に連携する動機が無いだけである。むしろ、設備管理面で積極的な取り組みがなされており、両社の線路および電気設備の工事と保守を請け負う会社を共同で設立したことは、民鉄界における新しい動きとして注目されるところである。

(3)JR東日本

 南西急行とJR東日本の関係は微妙である。南街道本線との競合ばかりが注目されているが、実は密接な連携関係にもある。平成9年10月、JR東日本の美咲空港乗り入れを認めるに至った交渉では、JR東日本のゴリ押しに対し、南西急行側はJR東日本の首都圏全駅から自社線への連絡乗車券を購入できるようにすることを要求する(JR東日本を自社の販売網として利用する意図があった)など、美咲空港駅を押さえているメリットを十全に生かして渡り合っている(このあたりの経緯は別項を参照

 また、平成14年にJR東日本がSuicaの運用を開始するとそのアライアンスにいち早く参加する等、JR東日本が開発した新機軸を積極的に導入しており、技術面でも繋がりがある。

(4)JR東海

 平成9年4月から、JR東海は南西急行と提携して、名古屋・甲府~美咲空港間に「美咲空港シャトルきっぷ」を発売した。当時、JR東海は他JRにまたがる区間の乗車券類を売ることを極端に嫌っており、それは大不評を買ったTEXきっぷ(新大阪・東京間「のみ」有効の新幹線回数券)の発売などにも現れている。この「美咲空港往復割引きっぷ」も、発売時期がJR東日本の美咲空港乗り入れの半年前だったこともあって、そうしたJR東海の戦術の一つと見られたのである。結局、この企画切符は需要そのものが少なかったためにわずか2年で発売中止となった。現在は、名古屋・大阪方面から新幹線経由・神津駅乗換でKDRを目的地とした旅行商品に力が入れられている。

(5)東京急行電気鉄道

 戦前期の経緯から東京急行電気鉄道渋谷駅の大家であったり、東京口が営業エリア的に同社グループに包囲されていたりと、協調とも競合とも言えない微妙な関係が続いてたが、2013(平成25)年の東急荻塚線の開業によってその関係性はさらに複雑さを増した。南西急行が紅林検車区を同線の車両基地として提供するようになり、一方で都内区間では利便性を増した東急に南西急行の通勤客が逸走している。かと思えば、非定期客では東急が南西急行に送客する様相が強まっている。特に香堂駅が両線の結節点として重要になってきている点は注目すべきで、同駅に発着する団体臨時列車の運転機会も増えている。

(6)新東武鉄道

 10年ほど前までは、新東武鉄道は南西急行から「トンネルの向こう」と呼ばれ、車両の共通仕様化や検測車の貸し出し等、直通運転先として技術面・運転取扱面での協調関係を結ぶ間柄ではあったが、営業面ではさして密接な関係はなかった。しかし、JRの湘南新宿ラインや上野東京ラインといった直通サービスの伸長により、南西急行~東京メトロ~新東武の直通系統すなわちNEWS-Lineの強化が必要になり、グリーン車の連結等の共同の営業施策を打つ等の動きが見られるようになっている。

 また、近年の外国人旅行客のインバウンド需要増大によって美咲空港アクセス・浅草や日光への送客など連携が必要な場面が各段に増えており、平成27年7月ダイヤ改正では北千住美咲間の特急ひよどりの定期列車化や、南西急行沿線から新東武線方面へ送客する団体臨時列車のスジが盛り込まれた団体列車のダイヤ#2.上り方向を参照)

(7)航空会社

 南西急行は、KDRや青海・水澄といった有名施設や観光地と美咲空港を直結していることを大いに活用し、全日空との提携によって地方発のパッケージツアーを精力的に販売している。また、全国の空港の全日空カウンターで南西急行の美咲空港から主要駅までの乗車券・特急券を発売できるようになっている。

 一時は、新宿駅構内に全日空のチェックイン・カウンターを設ける案まで出たことがあるが、そこまでの需要は見込めないことから見送られている。現在、CAT施設の多くが閉鎖に追い込まれていることを考えれば、それが正解であったろう。列車を空港間連絡の「飛行機」に見立てるサービスは、首都圏3空港を連絡するJR東日本が模索しているが、これすら実現の見込みは薄い状況である。

 今後、南西急行が注力するのは、主にアジア各国から日本への観光客の呼び込みであり、全日空の動きに合わせて営業戦略を展開していくこととなる。

 また、南西急行は政府が進める訪日観光客誘致キャンペーン(VJC)に全面協力しており、美咲空港運営会社のノウハウを導入して案内表示やパンフレット類の多言語化に早くから取り組んでいる。

(8)バス・タクシー

 X県下に路線を有するバス会社は、(南武鉄道系の社を除けば)南西急行の前身三社のバス部門を分離した会社であり、現在は資本関係は無い。また、業務提携と言えば、企画切符である青海フリーパス/水澄フリーパスのフリー乗車区間にバス路線が組み込んであることぐらいで、いずれの社も高速バスを中心に南西急行と競合する路線を有しており、むしろ年々競争関係が強まっている。

 X県の交通政策は鉄道整備を主、道路整備を従とするものであったが、それでも近年の道路整備によってバスの競争力は年々増しており、特に美咲空港発着の貸切輸送が南西急行の団体臨時列車と激しく競合するようになっている。

 当然、そのバス会社のタクシー部門も南西急行の味方にはなり得ないので、観光地における「足」の確保は専らタクシー専業の会社との連携に拠らなければならず、現在、そうした地元のタクシー会社との間で、駅~主要観光施設・宿泊施設間のタクシー料金定額化などの取り組みがなされている。

 しかし、近年はマイカーが青海半島や水澄地区に流れ込んで渋滞などの社会問題を巻き起こしており、マイカーという共通の敵を相手にして、南西急行とバス会社の提携(例えば往路鉄道・復路バスというツアーを販売して全体的な輸送効率を高めるなど)が再び模索されている。このあたりは今後の県の交通政策を注視する必要があるだろう。



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