南西急行のリスク管理
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南西急行は、多種多様な輸送需要に対応する、かなり特異な鉄道会社である。その輸送需要の中には美咲空港アクセスのように旅客が切迫した状況のものがあり、南西急行では輸送障害に対する数々の対策を打っている。本項ではその内容を紹介する。 |
1.輸送障害を発生させないハード対策
(1)ホームドアの整備
南西急行のホームドア整備状況については別項を参照。
(2)地上設備の強化
地上設備に起因する輸送障害を防止する方策として、特筆すべきものは以下がある。
(3)車両の特殊装備
- アーク検出装置
- 舟体への着雪や、エアーセクションを低速通過する際に発生するアークを検出するセンサーを全パンタグラフに装備しており、センサーがある条件下で動作するとパンタグラフを即座に降下させてトロリ線の断線を防止するようになっている。この装置は新東武鉄道・新東京メトロ谷町線の車両にもある。
- 車両動揺検出装置
- 特急用車両および急行用車両の全車両の両端に3軸式の加速度センサを装備しており、車両の足回りの異常を検出すると運転台に警報を発するようになっている(自動でブレーキをかける機能は無い)。また、常時データを収録し続けており、いわゆるCBM(Condition Based Maintenance:状態基準保全)への将来的な移行を目指している。
2.輸送障害に即応する対策
(1)警備員の配置
鉄道の輸送障害を起こす最大のリスク要素は、実のところ、人身事故に始まり、荷物挟まり、急病人、喧嘩…といった乗客自身が起こすトラブルである。その対策として南西急行では朝および夕~夜間のラッシュ時には混雑の激しい駅を中心に警備員を配置しているが、定期外の不慣れな乗客が多いことを反映してか、人員数は他の鉄道会社よりも明らかに多い。
A.朝ラッシュ時
南西急行の朝のラッシュには殺伐とした雰囲気はあまり感じられないが、それでも多くの乗客が短い時間帯に集中することからどうしても乗客同士のトラブルのリスクが増大する。そこで、東京線内の乗車人員数(乗降人員数ではなく)の多い駅を中心に警備員を配置している。
B.夕方ラッシュ時
夕方ラッシュ時は、帰宅客が特定の駅に集中して群衆の制御が困難になるリスクと、帰宅を急ぐ乗客の心理から駅務員や乗務員とトラブルになるリスクがあり、さらに酔客がそれを増大させる。そこで、夕方ラッシュ時には帰宅客が集中する東京側の拠点駅に警備員を配置してトラブルに対処している。朝ラッシュ時よりも長時間で、はるかにハードな勤務となる。
C.警備員常駐駅
乗降人員数が時間帯によらず常に多い渋谷・旗塚・神津・海浜公園・美咲空港・美咲の各駅には警備員が常駐している。この中で特に神経を使うのは、ベビーカーを使っているのに無理な乗降をしようとするドキュソ親が多い海浜公園と、置き引きが多発する美咲空港であると言われている。
(2)設備系・車両系社員の体制
南西急行では、東京線を担当する3つの電気区に3交代制勤務を導入し、地上設備に起因する輸送障害に即応している。電気設備は、故障の予兆をとらえることが事実上不可能であり、発生確率も高いことから、重要客の多い空港アクセス鉄道には必須の体制と言える(詳細はこちらを参照)。悪天候やイベント開催等で夕~夜間に対応力を強化する場合は、日勤者に超過勤務を指定して人員面を補強する。
3.輸送障害の影響を拡大させない対策
一たび輸送障害が発生した場合、その影響を広範囲に波及させないためには、高機能な運転設備を駆使した運転整理が必要になる。以下、路線別にその概要を解説する。
(1)東京線

東京線は旗塚と乾で急行線と緩行線を相互に転線できるようになっており、特に、下り方向では急行線旗塚~乾間で輸送障害が発生した場合は特急に限り緩行線経由で運転を継続することを取り決めている(極めて稀だが実際に行われたこともある)。上り方向では、上り緩行線のダイヤを痛めると直通運転先の新東京メトロ谷町線・新東武鉄道への波及が大きくなるため実施しない(下り緩行線であれば上りに波及しないように南西急行の裁量で運転整理が可能)。
また、急行下り線で継続運転不能な車両が発生した場合は、紅林3番線、神津22・23番線、新長坂2番線、新成原1番線に収容して後続列車の運転を阻害しないように対策している。
運転不能な区間が発生するような大規模な輸送障害の場合は、運転可能区間を区分した折り返し運転を行う。設備的には、渋谷・旗塚・紅林・神津・新成原・美咲空港の各駅で折り返しができる。ただし、運転再開まで3時間以上を要すると判断した場合にしか実施しない。3時間以内に復旧できる見通しであれば、折り返し運転を急きょ実施して現場を混乱させるよりは、そのまま復旧を待つ方が有利になる場合がほとんどである。
(2)青海線

上り(青海→美咲空港)列車用として戸机2番線・名取4番線・桂木町2番線が故障車収容線として空けられている。特に桂木町駅の設備は青海線の運転整理において非常に有利で、ダイヤ乱れで美咲駅のホームが塞がってしまった場合には上り列車を同駅で折り返しさせることがある。青海線の大半の乗客は「桂木町まで来ればJRに乗り換える等の手がある」のでこのような措置が可能なのである。
また、大規模な輸送障害が発生した場合の折り返し運転は名取・八浦・鶴神温泉・陽光高原の各駅で可能とはなっているが、片渡り線が多く、大量の列車を捌くことはできない。
(3)水澄線

水澄線は青海線より設備が若干弱く、上り(水澄→美咲空港)方向で故障車収容線として使えるのは実質的に長妻2番線だけである。館川町の25・26番線にはホームが無く、故障した編成の乗客をホームに降ろしてから収容しなければならず相当な手間がかかる(そのような場合でも素直に係員の指示に従って下車してくれるような乗客ばかりではない)ため、美咲の6番線も水澄線用に空けている。
美咲へ入線不可能になった場合には館川町駅の電留線で折り返すこともできるが、同駅で降ろされた乗客はバスやタクシーに乗り換えるしかなく、この点でも青海線より不利である。そのため、水澄線では大規模な輸送障害が発生した場合は矢積におけるJRへの振替輸送を念頭に置いた対応をする。
4.輸送障害の影響を早期に回復させる対策
(1)運転整理に有利なダイヤ
- 東京線
- 平成20年6月ダイヤ改正において急行と快速の停車駅を分担させる千鳥式ダイヤを導入し、朝ラッシュ時を除いて快速の途中駅での上位列車待避を解消させている。
- NEWS-Line
- 令和2年3月14日ダイヤ改正で、平日朝ラッシュ時に千鳥式ダイヤを導入。東仙寺・三泉・池尻での追い抜きを解消しつつ、全列車の所要時間を短縮した。
- 青海線・水澄線
- 平成21年10月ダイヤ改正平日朝ラッシュ時を除き、それぞれ名取・静町での各停の退避を解消した。
これらの対策により、列車順序が変わる場面が大幅に減り、運転整理に非常に有利になった。ダイヤが乱れて下位列車が上位列車の頭を抑えてしまう場面では、臨時に待避させて上位列車の定時運行を優先させることもできる。
(2)車両の仕様統一
ダイヤが乱れた場合に短時間で平復させるには、片方向に遅延が発生しても折り返し場面で反対方向の列車を定時で発車させることが肝要である。そのためには車両の運用範囲等に制約を設けず、折り返し変更が発生しても「今そこにいる編成を直近の折り返し列車に充当する」という運転整理ができるのが理想と言える。そこで、南西急行では以下のようにグループ別に車両の仕様を統一してダイヤ回復力を持たせている。
- 特急用車両
- 別項でも述べているように、平成28年度末現在において特急用車両は7400系・7800系の2車種だが編成構成は同一なので共通運用が組める。青海線の「なぎさ」と水澄線の「ひびき」に充当する編成が入れ替わっても特に支障は無い(平成5年10月ダイヤ改正で対策されている)。
- 急行用車両
- 平成14年3月ダイヤ改正で、それまで分割していた急行用と快速用の運用を統一してダイヤ乱れへの耐性を強化した。
- 一般用車両
- 平成21年10月ダイヤ改正以前は4両編成を基本に多客時間帯に8両編成とする運用であったが、同改正で約半数の運用を8両固定とし、さらに令和3年3月ダイヤ改正で全数を8両固定化した。分割・併合を廃止してダイヤ乱れが発生した場合の運用整理が容易になっている。令和4年10月時点で全編成が6両化された。
- 通勤用車両
- 別項の解説のとおり、NEWS-Line3社の車両は共通運用となっており、ダイヤが乱れても、車両の所属会社を全く気にすることなく「後で辻褄を合わせればいい」というノリで運転整理ができる。これは、他の直通運転系統には見られない大きな特長と言える。