八浦鉄道6000系



1.導入の経緯
八浦鉄道では、従来、旧南西急行2000系を2両編成に改造した車両(八浦鉄道2000系)を使用してきたが、車両の保守整備を委託している南西急行側から抵抗制御車撲滅の方針が示された。そこで、南西急行6000系の緩行線グリーン車への転用に際し発生した部品を活用し、新製車体と組み合わせて生み出されたのが本形式である。
八浦鉄道2000系は、2000系Tc車の先頭部をM車に接合してMc'車を生み出していたが、運転台機器と他の機器との制御線の接続作業に死ぬほど苦労した経緯があった。そこで本形式は、空気配管や電線通線を終えた車体を新製し、そこへ既存車から抜き取った主要部品を艤装して建造されている。
この方法は、両社の協議の結果、低コストでVVVFインバータ制御方式の車両を得るために採用された。このときの技術的経験が、後の6400系建造の際にも生かされている。
平成22年度末までに八浦検車区にMc+Tc'の7編成14両が配置されている。形式番号は、2000系の改造・転用の際と同様に、旧型式名である6000系が踏襲された。
2.主な仕様
本形式の仕様決定には、南西急行側の思惑が色濃く反映されている。南西急行は、本形式を将来の多用途車両のプロトタイプと位置付けていた。子会社とは言え、他社の車両で実験的施策を行うというのはかなり酷い話ではあろう。
- 車体
- 低コスト化のため、先行して登場していた7600系と車体設計を共通化し、アルミ製ストレート車体を採用(材質面で高価であっても設計費でコストダウンになるという判断であったようだ)。新東京メトロ谷町線へ直通する小口団体向けの列車に使用したいという狙いもあった。
- 車内レイアウト
- ラッシュ時の客捌きを考慮し、両開き3扉車となった。一般列車・団体列車の両方に運用できるよう、回転クロスシートをピッチ900mmでドア間に5列配置。団体列車として使用する際は中央の扉を閉め切って補助座席を使用する。これらの機構は6200系にも採用された。
- 先頭部
- 他の車両と併結して編成両数をきめ細かく設定できるように自動幌機構を備えた貫通扉を有する。これは八浦鉄道には無用な装備だが、南西急行側の都合が優先された形になる。
- 運転関係機器
- 6000系に装備されていた機器類を再用。新東京メトロ谷町線および新東武鉄道に直通可能な保安装置・列車無線をそのまま搭載している。運転台スペースが6000系より縮小されたため、狭い空間に多くの機器が詰め込まれ運転士からの評判は良いものではないが、これは7600系や6400系でも同じである。
- シート
- 団体列車に使用することを考慮し、リクライニング機構を廃しつつ座り心地を徹底的に追及したシートを試験的に採用している。背面にはテーブルを備え、用務・行楽の両方に対応可能(設計当時はモバイル機器が現在ほど普及していなかったため、コンセント等は無い)。
- トイレ
- 長距離運用にも適用可能となるよう、Mc車にバリアフリートイレ・男子用トイレ・洗面台を新設した。八浦鉄道は、無人駅の管理上、初原駅以外にトイレを設けていないため、車両側に設けなければならないという事情もある。
- 走行機器
- 台車(電動機含む)・空気関係機器・制御装置等はほぼ全て6000系から剥ぎ取ったものを再用した。高速運転に対応すべく、ヨーダンパもそのまま使用されている(八浦鉄道線内では不必要なものである)。
- 空調装置
- 6000系のものを再用。
- 塗装
- 特急車に準じて、アルミ車体にベースカラーとして白の塗装を施している。団体列車運用の際に「特別感」を醸し出させて一般客の誤乗を防止するためである。帯色は評判の良かった旧6000系を踏襲している。
3.車両の運用
本形式の通常の検査・修繕は南西急行の八浦検車区で行い、重要部検査は同じく関浜車両所で行う。
車両の運用としては、初原駅滞泊2本、八浦検車区滞泊3本(うち2本は平日朝ラッシュ時のみの運用で日中は八浦検車区留置)、予備2本(八浦検車区常駐)となっており、日中に7本中4本が遊んでいる勘定になる。この4本は必要に応じて南西急行に貸し出して団体列車・臨時列車に充当することになった。これは、南西急行の八浦鉄道に対する経営支援策の一環であり、それ故、南西急行側の我儘がまかり通ったのである。