信号・通信設備
toratora.wikiは2023年3月31日をもってサービスを終了します。1.信号設備
(1)閉塞方式と基本ハードウェア

南西急行は神宮線東城学園駅~武蔵神宮駅の単線区間を除いて全線が複線自動閉塞方式で、平成26年7月時点で東京線系全線、青海線美咲駅~新八浦駅間、水澄線美咲駅~御幸台駅間が車内信号式、青海線八浦(除)以南および水澄線御幸台(除)以西が地上信号式となっている。
連動駅は図のように分布しており、全駅が電子連動装置を使用している。なお、南西急行では設備を簡素化するためにいわゆる棒線駅は全て停留場として連動駅の削減を図っている。
軌道回路は、東京線系全線と青海線美咲~新八浦間、水澄線美咲~御幸台間の駅中間では無絶縁式、連動駅構内および青海線八浦(除)以南・水澄線御幸台(除)以西では商用周波式が使用されている。
地上信号機は平成25年5月のATC化区間拡大に伴い大幅に数を減らしており、残存する信号機は全数をLED形に統一して視認性と信頼性の向上を図っている。
転轍機はNS形が主力で、YS形は使われていない。重要分岐器を中心に、JR東日本が開発したES2型次世代転轍機の導入を進めている。
(2)保安装置
南西急行の前身である青海鉄道と水澄鉄道は、国鉄からの直通列車を運転していた関係で保安装置にATS-Sを採用していた。一方、京神電鉄は、昭和42年の運輸省からの通達(いわゆる私鉄ATS通達)で高密度運転を行う私鉄路線への速度照査機能付きATS整備が義務化されたことから、東武鉄道が開発したTSP-ATSを採用した。当時、京神電鉄と東武鉄道は営団地下鉄の新路線(現在の新東京メトロ谷町線)を介した直通運転について協議中で、両社のATSを共通化することでコストダウンを図ったのである。また、このATSは車両の減速性能に応じたパターン速度照査が可能であり、将来の京神・青海・水澄の3社経営統合を睨み、性能のバラバラな寄せ集めの車両群であっても統一的に保安度を確保できる利点があった。
その後、経営統合後の南西急行は、青海線・水澄線の複線化に際し運輸省から全線への速度照査機能付きATS整備を求められ、両線のATS-Sを平成3年度までにTSP-ATSに更新した。その後、長く同ATSが使われてきたが、設備の老朽化・陳腐化は避けられず、平成22年10月に新宿~砂町間、平成25年5月に砂町~美咲間、美咲~八浦~新八浦間、美咲~御幸台間をATC-Dに更新した。
ATC-DはいわゆるデジタルATCの一種で、TSP-ATSに対し、連続制御による運転間隔短縮(ヘッドカット)、一段ブレーキ制御による乗り心地向上、一層の安全性の確保が可能となっている。
なお、青海線八浦以南、水澄線御幸台以西の区間のTSP-ATS更新については、令和2年度末現在、検討中となっている。
(3)運行管理システム

南西急行の運行管理システムはARMS(アームズ:Advanced Railway Management System)と呼ばれ、平成4年度に導入したバージョン1を平成13年度にバージョン2へ、さらに平成28年度にバージョン3へ更新している。
バージョン1は、東京線(急行線)・青海線・水澄線の3路線のCTC装置および美咲駅の連動装置にPRC装置を接続した構成であり、他の民鉄各社と大差ないシステムであった。
バージョン2(ARMS-V2)では、高速・大容量通信技術の進歩に合わせて、制御所のダイヤグラムサーバーから各連動駅のPRC装置に列車ダイヤデータを配信し、そのデータに従ってPRC装置が各駅の連動装置を制御する方式が採られている。このことにより、故障時の対応が最も難しいCTC装置が無くなった。
ダイヤグラムサーバーから各連動駅のPRC装置への通信回線は、光ファイバーによるリングネットワーク(しかもそれが2回線)を構成することで冗長性が確保されているが、それ以外にマイクロ波等の他の通信方法でも接続可能であり、それすら叶わない場合は各連動駅で直接PRC装置に介入して手動操作することもできる。
また、ARMS-V2は、ダイヤが乱れた場合の自動運転整理機能等はあえて強化せず、実績管理に徹して、指令員の手動操作を支援するという方針で構成された。また、指令員の指示内容が確実に現場の社員に伝達されるよう、指令員の操作から指令電文を自動作成し、乗務員等が携行しているタブレット端末に転送する「運転通告伝送システム」が実装されている。
現行版であるARMS-V3は、基本的な機能はV2を踏襲し、マシンパワーの大幅な強化により、将来の機能強化によるシステム負荷の増に対応できるよう、拡張余地を確保する方針で構成されている。
(4)踏切保安設備
南西急行には踏切が144箇所存在するが、そのほとんどは青海線・水澄線区間にあり、東京線には藤田駅の前後に4箇所しかない。 踏切は全て第一種踏切で、画像認識形障害物検知装置が備えられている。この装置は遮断後の踏切内部のステレオ画像を分析して障害物の存在を判定するもので、従来のレーザー式やループコイル式に比して低コストかつ確実に障害物を検知することができる。踏切内に障害物がある場合には防護無線を発報して近傍の列車を停止させる。踏切に設けた緊急停止スイッチが押された場合も同じである。
また、この検知装置が撮影したカメラ映像は信号通信指令に送信することもでき、踏切遮断幹が折られたことを検知したときは、その前後1分間の映像を記録して「犯人」の車両の捜索に活用できる。
2.通信設備
(1)光ネットワーク
南西急行は会社統合の際に業務システムのコンピュータ化を進めたため、比較的早い時期から通信インフラが整備されてきた。当初はメタリック回線であったが、平成4年のARMS-V1使用開始に備えて平成元年から光ファイバーによるネットワークへ更新されている。
用途としては、社内電話、列車無線、変電所遠制、踏切監視、VSN(営業設備用ネットワーク)、EXNET(業務用ネットワーク)、ARMS(列車運行管理システム)等がある。整備した当時は「回線使用状況は容量に対してかなり余裕があり将来の通信量増加にも十分対応可能できる」とされていたが、すぐに容量不足に陥り、増強工事を順次施工して対応している&small((泥縄式との嫌味も聞こえるが));。なお、この工事では、光ファイバーケーブル内の芯線多重化だけでなくケーブルルートそのものを多重化して、沿線火災等によるケーブル断線があってもシステム全体の機能が喪失しないように対策している。
(2)マイクロ無線設備
災害時に光ケーブルが断線する等の事態に備え、南西急行ではマイクロ無線設備を予備の通信システムとして保有している。 基地局は旗塚・神津・美咲・八浦・青海・御幸台・水澄の7箇所、反射板は5箇所設けられている。基地局は前述の光ネットワークのループの途中に挿入され、光回線の一部区間が不通になった場合、当該区間の通信を無線伝送で代替するようになっている。ただし、光ファイバーに比して無線の回線容量は少ないため、収容する回線は、社内電話、列車無線、変電所遠制、ARMS等、列車運転に必須のものに限定されている。
(3)列車無線設備

南西急行の列車無線は、会社統合前の3社が持っていた無線局免許を承継した経緯から、A:東京線急行系、B:東京線緩行系、C:青海線系、D:水澄線系の4系統がある。
固定局(基地局)は図のように配置され、新成原の総合指令所と光ファイバー回線で接続されている。地下区間および長大トンネル内には基地局からLCX(漏洩同軸ケーブル)が架設されていて、不感地帯は無い。
移動局(列車用)無線機は、下表のように搭載している。
東京線 | C青海線系 | D水澄線系 | 新東京メトロ 誘導無線 | 新東武 空間波無線 | ||
A急行系 | B緩行系 | |||||
通勤用車両 | ○ | ○ | ― | ― | ○ | ○ |
一般用車両 | ○ | ○ | ○ | ○ | ― | ― |
急行用車両 | ○ | ○ | ○ | ○ | ― | ― |
臨時用車両 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
特急用車両 | ○ | ○ | ○ | ○ | ― | ― |
事業用車両 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
(参考)八浦鉄道 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
また、南西急行・新東京メトロ・新東武の3社では列車無線の切換を自動的に行うシステムを採用している。以下の駅に存在する。
東京線 | C青海線系 | D水澄線系 | 新東京メトロ 誘導無線 | 新東武 空間波無線 | ||
A急行系 | B緩行系 | |||||
(参考)北千住駅 | ― | ― | ― | ― | ■ | ■ |
恵比寿駅 | ― | ■ | ― | ― | ■ | ― |
旗塚駅 | ■ | ■ | ― | ― | ― | ― |
紅林駅 | ■ | ■ | ― | ― | ― | ― |
乾駅 | ■ | ■ | ― | ― | ― | ― |
美咲駅 | ■ | ― | ■ | ■ | ― | ― |
(4)防護無線設備
列車無線よりもさらに緊急性の高い警報を発信する、単方向通信専用の無線設備である。他社にも同様の設備はあるが、南西急行の設備は、警報信号の変調周波数を変えることにより発信元と警報レベルを区分できるという特長がある。
防護無線の発信装置は、
- ア:列車運転台の送受信機
- イ:駅の非常停止ボタン
- ウ:踏切障害物報知装置
- エ:災害警報装置(土砂崩壊、地震等)
の4種類があり、アの装置のみが受信機の機能を有し、受信した信号がア~エのどの種類の発信機から発報されたものかをランプで表示するようになっている。 線路設備の項でも述べているように、南西急行の緊急事態における警報レベルは
レベル1 | 時速45km/h以下に速度を制限する |
レベル2 | 時速25km/h以下に速度を制限し、駅間停車を防止するため通知運転を行う |
レベル3 | 時速15km/h以下に速度を制限し、列車を最寄りの駅に到着させてから運転を抑止する |
レベル4 | 列車を即座に停車させ運転を抑止する |
の4段階あるが、そのうち上記のア・イから発信された信号は人命に直結するためレベル4、ウ・エからの信号は事故現場に列車を極力接近させて状況を把握するためレベル3に設定されている。
3.メンテナンス体制
信号・通信設備の保守作業を担当する現業機関としては、電力部門と同じく、紅林・関浜・八浦・矢積の4箇所の電気技術センターがあり、信号Gと通信Gの2グループがある。南西急行の通信設備は汎用技術を用いて構成されているので保守作業は全て外注。
平成9年度に初導入(平成17年度に更新)された電気・軌道総合試験車には信号・通信設備の検査装置も搭載されており、軌道回路の電圧・電流およびデータ伝送品質、列車無線の受信感度等の自動計測ができる(ただし、実施は年4回)。
通信設備の保守作業、および信号設備の修繕工事は、電力と同じく湘南電気エンジニアリング㈱(略称SEEC)が行っている。